死んだらどうなるの?〜死後の世界を考える〜

ここを読んでいるあなたは、今何となく満足した心が生じているかもしれませんが、あなたを動かしている意識においては、何となく物足りない人生を送っているのではないでしょうか、、、

6 退行催眠・前世療法で見た前世

退行催眠で前世の記憶にまでさかのぼってしまった

「退行催眠」とは、

催眠の暗示によって過去の記憶に連れ戻し、

抑圧されて忘れてしまったような記憶を思い出させる方法である。

これはもともと、

幼少時に心に受けた傷(トラウマ)を探るために有効な手段とされてきたが、

それがたまたま「出生以前」にまでさかのぼってしまったことがある。

被験者は今の生における幼少時を飛び越えて、

「前世」における体験を話し出す、

という事例が出てきたのだ。

 

退行催眠の現場より–––よみがえった過去生

1982年、ブライアン・L・ワイス博士 (マイアミ大学医学部精神科教授)が、

キャサリンという被験者に退行催眠を行っていたときのことである。

ワイス博士は、

伝統的な科学観のもとで多数の論文を発表していた真面目な研究者であり、

当時、生まれ変わりや死後の生命については、

全く信じていなかった。

キリスト教徒であるキャサリンも、

生まれ変わりなど信じてはいなかった。

それまで、キャサリンの水や暗闇に対する恐怖心の原因を探ろうと、

幼少の頃まで記憶をさかのぼらせたが原因が見あたらなかったため、

ワイス博士は時期を限定せずに、

「症状の原因となった時にまで戻りなさい」

という漠然とした指示を行ってみた。

ワイス博士は、その時の出来事を次のように記している。



「あなたの症状の原因となった時にまで戻りなさい」 

その後に起こったことに対して、

私は全く心の用意ができていなかった。

「建物に向かって、白い階段が見えます。

柱のたくさんある白い大きな建物で、

前の方は開いています。

入口はありません。

私は長いドレスを着ています。

ごわごわした布でできた袋のような服です。

私の髪は長い金髪で、編んでいます。」

私は、何が何だか、わからなかった。

一体、何が起こっているのだろうか。

それはいつのことで、

あなたの名前は何というのかと、

私は彼女に質問した。

「アロンダ......私は18歳です。

建物の前に市場が見えます。

籠があります。

籠を肩に乗せて運んでいます。

私たちは谷間に住んでいます。

水はありません。

......時代は紀元前1863年です。

その地域は不毛で、暑くて、砂地です。

井戸があって、川はありません。

水は、山の方から谷間に来ています。

......足にはサンダルを履いています。

私は25歳です。

私にはクレアストラという名前の女の子がいます

......彼女はレイチェルだわ(レイチェルは現在の彼女の姪であり、

とても親密な関係にある)。」

私(ワイス博士)はびっくりした。

胃がきゅっと縮み、部屋の中がとても熱く感じられた。

彼女の見ているビジョンや思い出は、

非常にはっきりしているようだった。

あやふやな所は全くなかった。

名前、時代、着ているもの、木、全てがありありとしていた。

何が起こっているのだろう。

その時の彼女の子供が、

現在の姪だなんてことがあり得るのだろうか。

私は、ますますわけがわからなくなった。

それまで、何千人もの精神病患者を診てきたし、

催眠療法も数えきれないほど行ったが、

こんなに見事な幻想には、

夢の中の場合でさえ、

一度も出会ったことはなかった。

時をもっと先に進めて、

死ぬ場面に行くようにと、

私は指示した。

私は彼女の症状の原因になった事件を捜していた。

「大きな洪水が木を押し倒していきます。

どこにも逃げ場はありません。

冷たい。

水がとても冷たい。

子供を助けないと。

でも、だめ......子供をしっかりと抱きしめなければ、

おぼれそう。

水で息がつまってしまった。

息ができない。

塩水で、飲み込めない。

赤ん坊の身体が、

私の腕からもぎ取られて行ってしまった!」

キャサリンはあえぎ、

息ができなかった。

突然、彼女の身体がぐったりして、

呼吸が深く安らかになった。

「雲が見えます。

......私の赤ん坊も一緒にいます。

村の人達も。

私の兄もいます。」 

彼女は休んでいた。

その人生は終わったのだった。

私は驚き、あきれていた。

過去生だって?

輪廻転生だって?

しかし、彼女が幻想を見ているのでもなければ、

物語を創作しているのでもないことは、

医者としての知識からも確かであった。

医学のあらゆる事例が私の心をよぎったが、

彼女の精神状態や性格からは、

いま起きたことを説明することはできなかった。

これらは、ある種の記憶に違いなかった。

しかし、どこから来たものなのだろうか。

自分がほとんど知らない分野、つまり、

生まれ変わりや過去生の記憶といったものにぶつかったのではないか、

と私はとっさに思った。

でも、そんなはずはない、

と自分に言い聞かせた。

科学で仕込まれた私の理性が拒否していた。

しかし、現実に、目の前でそれは起こっているのだ。

私には説明できないけれど、

現実を拒否することもできなかった。

「もっと続けてください。」 

少し気分が悪かったが、

起こっていることに興味があった。

「ほかに、何か想い出せますか?」と聞くと、

彼女は断片的に、その他の二つの人生を思い出した。 

ワイス博士は、このようにして、

退行催眠の被験者が「過去生の記憶」を思い出す瞬間に初めて出会った。

(飯田史彦『生きがいの夜明け」)

 

 退行催眠にも実証例が出てきた

前世の記憶を持つ子供たちに対して当てはめられた厳しい検証

–––その前世の記憶が史実と合致すること–––

に耐えうるような前世の記憶が、

退行催眠によって思い出された例もある。

 

退行催眠中に出てきた言語が、かつて存在したものであることが確認される

ジョエル・L・ホイットン博士(トロント大学医学部精神科主任教授)は、

ハロルドという被験者が退行催眠によって、

過去にヴァイキングであった人生を想い出しながら口にした、

当時の言葉を書き留めておいた。 

ハロルドは、自分が思いだした22の語句について、

どれも理解できなかった。

そこで、専門家に鑑定を依頼してみたところ、

アイスランド語ノルウェー語に詳しい言語学の権威が、

それらのうち10の語句について、

ヴァイキングが当時使用した言語で

現代アイスランド語の先駆となった

古い北欧語であることを確認した。

他の語句については、

ロシア語、セルビア語、スラヴ語から派生したものであり、

ほとんどはヴァイキングが使用した海に関する語句であることが確認された。

これらの語句はすでに現存しておらず、

一般人であるハロルドが今回の人生で知り得たはずもないため、

退行催眠によって導き出された過去生の信憑性を証明する強力な証拠となる。

退行催眠で過去生を思い出しながら、

今回の人生では知り得ない言語を喋り始める被験者は数多いが、

その言葉は世界中の広範囲に広がっており、

古代中国語やジャングルで使われる方言までもが含まれているという。

(飯田史彦『生きがいの夜明け』)

 

先天的に目が見えない人が光を描写した

シカゴ州立大学の哲学教授ジェイムズ・バレイコ博士は、

先天的に目の不自由な人たちのなかに、

光を当てると反射的な反応を示す例があることに注目した。

これは、前世で目が見えたときの記憶ではないか、

というのである。 

この実験の様子は『オムニ」1984年8月号に報告されている。 

バレイコ博士は、

先天的な目の障害者3人に退行催眠をかけた。

すると、全員が目の見えていた前世の記憶を思い出したようで、

ろうそくがゆらめく様子、

人の顔の特徴、

黄色っぽい歯や皮膚のシミなど、

生まれてから一度も目にしたはずのないイメージが浮かび上がってきたのである。

その中でも一人は、

「金持ちが身につけている宝石に太陽の光が当たると、ピカッと反射する。

こういう瞬間にはどうしても目をそらさないではいられない」と語り、

「盲目に生まれる以前」に光を見たことがあることを証明する発言をしている。 

バレイコ博士は、この実験から、

転生は実在すると結論づけている。

 

前世療法は効果があるが実証例にはしづらい

前世にまでさかのぼる退行催眠をさらに積極的に活用し、

前世に受けたトラウマ(心の傷)を癒すことによって

精神的な問題を解決するという手法がある。

これが前世療法である。

患者が前世において精神的に深い傷を負った場面を催眠下で体験すると、

心身の障害が治るという実例が数多く出てきたことから、

アメリカでは1980年に前世療法の研究協会APRTが設立され、

機関誌も刊行されているほどだ。

確かに「前世を思い出す」ことによる治療実績は

かなり上がっているようである。

ただ、これらの前世療法で思い出した「前世」の多くは、

事実であるかどうかの検証がなされていないものも多い。

特に前世催眠セミナーなどに参加する場合、

参加者も「前世を見たい」というような期待を抱いているため、

自分の望むような「前世のヴィジョン」を

潜在的に作り出してしまう可能性もあるのである。

前出のワイス博士によるキャサリンの「前世」記憶も、

それが事実と合致するものとして検証されたわけではない。

私の調べた限りでは、

ホイットン博士とバレイコ博士の例のみが、

思いこみや空想ではなく、

実際の前世を思い出したと考えたほうが合理的と思われるものであった。

前世の存在を科学的に検証するにあたっては、

今後、退行催眠によって思い出された「前世」の記憶が、

実際の歴史と合致しているかどうかの

検証がなされる必要があると思われる。