死んだらどうなるの?〜死後の世界を考える〜

ここを読んでいるあなたは、今何となく満足した心が生じているかもしれませんが、あなたを動かしている意識においては、何となく物足りない人生を送っているのではないでしょうか、、、

9 死後の世界の物語

 

私は、死後の世界について明白な形でのべたことはない......

今になっても、私はお話を物語る

――神話として話す――

以上のことはできない。

この点について自由に語るためには、

多分、死に近づいていることが必要であろう。

 

私は心の不思議な神話に注意深く耳を傾けることにした。

そして、それが私の理論仮説に適合しようがしまいが、

そこに生じる、いろいろな事象を注意深く観察しようとした。

 

われわれが知ることのできないことがあるならば、

われわれはそれを知的な問題としては捨て去らねばならない。

たとえば、私は宇宙が存在するに到った理由を知らないし、

決して知ることもないだろう。

従って、このような問題は、

科学的、知的な問題からははずさねばならない。

しかし、それについての考え方が

――夢や神話的な伝統において――

私に示されるならば、

それに注目しなければならない。

そのようなヒントを基礎として、

ひとつの概念をつくりあげることさえしなければならない。

 

(ヤッフェ編「ユング自伝』みすず書房)

 

『死んだ人間はどうなるのか――死後の存在と転生の科学的研究』

では、死後の世界の存在、

輪廻転生の実在をさまざまな角度から検証し、

現代の科学者によってもそれらの存在が

次第に証明されつつあることを紹介した。

しかし、死後の世界そのものを詳述するまでには至らなかった。

それは、まだ科学的な証明が及んでいない領域だからだ。

また、それが存在したとしても、

その仕組みやメカニズムについては、

現時点で検証することは難しいだろう。

そこで、この第2分冊では、

世界各地の「伝承」としての死後の世界観を概観してみることにした。

それは「言い伝え」にすぎないかもしれないが、

このような検証の難しい問題については、

大いに参考になると思われる。

たとえば、あなたはアメリカに行ったことがないとしよう。

あなたは自分の目でアメリカを見たわけではないから、

あるかないかわからない。

しかし、アメリカに行った人が何人もいるとする。

あちこちにいる無関係な人たちが、

全く事前に示し合わせることもなく、

そろって「アメリカという国はあるんだ」と言ったとしたら、

その人たちがウソをついていない限り、

アメリカという国はあるのだな、

とあなたは考えるのではないだろうか。

 

つまり、多くの人が独自に見たものは信憑性が高まるということだ。

もちろん、だからといって完全に

「存在する」

とは断言できないことは注意しなければならないだろうが。。。 

死後の世界の仕組みについても同様である。

古今東西、時期と場所を違えても

同様の死後の世界観が語られているならば、

それは彼らが幻覚を見たとかウソをついていると考えるよりも、

「同じものを見た」

と考えるほうが自然ではないだろうか。

ただ、厳密にいえば、

世界各地に伝わる「死後の世界」の姿は、

少しずつ異なっている。

それは矛盾だと考える人もいるかもしれない。

しかし、全く同じではなくても、

それが矛盾するとは限らないことに注意したい。

先ほどのアメリカのたとえを使ってみよう。

ある人(Aさん)はニューヨークしか見ておらず、

別の一人(Bさん)は西部の大平原しか見なかった。

そして、さらに別の一人(Cさん)はアメリカを横断していたとしよう。

AさんとBさんが話をすれば、

それはまるで違うことを主張しているように思われる。

Aさんは「アメリカとは都会だ」と断言するが、

Bさんは「そうではない。未開の地だ」と主張するだろう。

Cさんは「アメリカには都会であるところも、田舎もある。

そのどちらもがアメリカなのだ」と語る。

この三人の話はかみ合わないが、

だれもウソをついているのではない。

もし、Cさんが見たものの中にAさん・Bさんの見たものが含まれる、

という関係がわかれば、

これは矛盾ではないということになるだろう。

死後の世界観においても、

あるものは狭いごく一部分しか語っておらず、

別のものはそれを含む広い形で語っている、

ということがあるだろう。

それは、死後の世界観を比較対照することで見えてくると思われる。

冒頭に『ユング自伝』の「死後の生命」という章からの抜粋を挙げたが、

この大心理学者と同様、

私もまた死後の世界の描写については

物語としてしか語ることができない。

だが、その物語には深い意味があろうと信じる。

その検証資料をまとめたのがこの冊子である。

第1分冊とは少々アプローチ法が違っているが、

皆さんが死後の世界について考えるための資料として

活用していただければ幸いである。

 

なお、本文中において、

引用もと文献によってカタカナ表記の違う固有名詞がいくつかあるが、

引用の場合は原文を尊重したことをお断りしておきたい